結論
前期以前に本来損金算入すべきだった経費を、計上漏れに気づいた年度の経費として、そのまま法人税の損金に算入することは原則としてできません。
まず、その経費が本来どの事業年度の損金になるものだったのかを確認します。
その結果、過年度の所得金額を多く申告していた場合や、欠損金額を少なく申告していた場合は、対象年度について更正の請求を検討します。
会計上、当期に修正仕訳を入れたとしても、それだけで税務上の損金算入時期が当期へ移るわけではありません。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| ① 本来の帰属年度 | いつの損金だったか |
| ② 過年度申告への影響 | 所得金額・欠損金額・税額への影響 |
| ③ 更正の請求期限 | 原則として5年以内か |
| ④ 当期の会計処理 | 修正仕訳と申告調整をどうするか |
まず「本来いつの経費だったか」を確認する
損金算入の時期は、費用の種類や契約内容、債務の確定時期などによって異なります。
そのため、過年度の計上漏れを見つけた場合は、単に現在の帳簿残高を合わせるだけではなく、
請求書、契約書、納付資料、帳簿などから、どの年度に帰属する費用なのかを確認することが重要です。
前期の経費30万円を今期に見つけた場合
たとえば、前期中にサービスの提供が完了しており、本来は前期の損金とすべき外注費30万円を計上し忘れていたとします。
この30万円を今期になって見つけたからといって、今期の経費としてそのまま法人税の損金にするわけではありません。
| 黒字だった場合 | 赤字だった場合 | |
|---|---|---|
| 前期の申告状況 | 所得200万円として申告 | 欠損金100万円として申告 |
| 本来の状態 | 外注費30万円を反映すると 所得170万円 |
外注費30万円を反映すると 欠損金130万円 |
| 確認すること | 所得を30万円多く申告しているため、更正の請求を検討 | 納付税額が変わらなくても、繰り越せる欠損金が30万円少なくなっていないか確認 |
過年度の申告内容を確認する
先ほどの例のように、過年度の経費の計上漏れは、納付税額だけでなく所得金額や欠損金額にも影響します。
法人税を多く申告していた場合は、対象年度について更正の請求を検討します。
※赤字の年度などでは納付税額が変わらなくても、欠損金額を本来より少なく申告している場合、欠損金額への影響を確認する必要があります。
通常の更正の請求は、原則として法定申告期限から5年以内です。
計上漏れが複数年度にまたがる場合は、年度ごとに金額や申告への影響、期限を確認します。
当期の会計処理と法人税申告は分けて考える
過年度の計上漏れが今期に見つかった場合、単純に今期の経費として計上して終わりにはできません。
まず、過年度分として帳簿をどのように修正するかを確認します。
そのうえで、過年度の法人税申告をどう直すかと、今期の法人税申告でどのように処理するかを整理します。
たとえば、今期の帳簿に前期以前の費用が含まれていても、その金額が税務上は今期の損金にならない場合には、別表四で今期の損金から除外する処理を検討します。
別表五(一)まで含めた処理は、過年度について更正の請求や申告調整を行っているか、税務上の調整残高が残っているかなどによって変わります。
帳簿の修正だけで終わりにするのではなく、過年度の申告と今期の法人税申告まで整合しているかを確認することが重要です。
実務で確認したいこと
- 計上漏れとなった経費の内容と対象期間
- 本来の損金算入時期
- 当期分の経費が混ざっていないか
- 過年度の所得金額・欠損金額・税額への影響
- 過年度の法人税申告で既に税務調整していないか
- 更正の請求が可能な期間内か
- 当期に行った修正仕訳と申告調整が整合しているか
- 過年度の経費の計上漏れに気づいた場合は、まずその経費が本来どの年度のものだったかを確認
- そのうえで、対象年度の所得金額・欠損金額・税額への影響を計算し、更正の請求が必要かを判断
- 今期は、その過年度分をそのまま今期の損金にせず、帳簿と法人税申告の処理を整理