減価償却は、決算や確定申告の場面で必ず登場する会計処理です。
事業をしていると、避けて通れないテーマといえるでしょう。
しかし、単純に「資産の価値が下がるから費用になるもの」と理解されていることも多いのではないでしょうか。
ただ、これを文字どおり「価値の減少」だけと捉えてしまうのは、
少しもったいないと思うのです。
減価償却の本質は、「費用配分」にあります。
今日は、減価償却をさまざまな角度から眺めてみたいと思います。

基本の確認|減価償却ってなんだっけ?
基本をおさらいしておきましょう。
①減価償却とは?
- 対象:固定資産(建物やパソコンなど)
- 内容:買った金額を、使える期間にわたって按分し、費用として計上する
- 結果:損益計算書(PL)→減価償却費
貸借対照表(BS)→固定資産の簿価が下がる
といったものです。
要するに、固定資産を購入した時に必要となる会計処理のことです。
②具体例で見てみる
シンプルなケースで見てみましょう。
- 2026年1月1日に100万円の機械を買って、使用開始
- 使える期間(耐用年数)は10年
この場合、2026年度では以下の仕訳で表現されます。
- 購入時: (借方)機械100(貸方)現金及び預金100
- 減価償却:(借方)減価償却費10(貸方)機械10
10年間を並べると、このような形です。

19世紀の鉄道会社から始まった「会計上の技術」
さて、このような減価償却費の会計処理は、もともとあったものではありません。
時は、19世紀の鉄道会社に遡ります。
鉄道の運営には、最初に莫大な投資が必要です。
電車本体に加え、レールを敷いたり、電線を整備したりなど。
これを従来通り買った時に費用に計上すると、
初年度は大きく赤字、2年目以降は黒字
といった歪な決算書ができあがってしまいます。
そこで登場したのが「減価償却」の考えです。
たとえば、20年間で収益が計上される鉄道事業であれば、
買った費用も20年間で按分して計上しよう!
このような「手法」を事業家は考えつきました。
収益と費用を対応させる
これが減価償却の根本にあります。
よくある誤解と本質
よくある誤解①:価値の下落を反映
このように、減価償却の本質は、「収益と費用を対応させること」にあります。
収益を生むために使ったコストを計る、ということです。
「価値の下落を反映させること」自体は、目的ではなく結果です。
「減価償却」という言葉は、あたかも「価値の下落」を表しているように見えます。
つまり、資産に焦点が当たっているので、より勘違いが増えているのかなと。
よくある誤解②:BSの金額=資産の価値
減価償却後の帳簿価額は、資産の「現在価値」ではなく、
まだ費用化していない取得原価(未費用化原価)を表しています。
つまり、減価償却は価値を測る仕組みではなく、費用を配分する仕組みなのです。
そもそも、その時点の資産価値を正確に測定できるのであれば、
減価償却という仕組みは不要になるはずです。
※これは「時価会計」といい、固定資産の領域では限定的に採用されているもの
しかし、上場株式などとは異なり、固定資産の適切な時価を把握することは困難です。
また実務的にも、すべての固定資産の時価を計ることは難しいでしょう。
そのため、購入時点の金額を起点にした減価償却(原価主義といいます)が、採用されているのです。
よくある誤解③:耐用年数=実際に使える年数、とは限らない
そして、本来的には「使える期間」で減価償却をすべきです。
固定資産を使うことで収益が発生します。
その使える期間に対応させるため、この考えが原理原則です。
しかし、実際には税務上で定められた「耐用年数」によって
減価償却が行われるケースがほとんどです。
税金計算では、公平性や客観性が重視されます。
そのため、主観が入りやすい「使用できる期間」ではなく、
「あらかじめ定めたルール」によって償却することになります。
このように、実務では減価償却の本来の考え方から、
少し離れた処理が行われることもあります。
※そのため会計上の考え方と、税務上の処理(耐用年数・償却方法)は一致しないことがあります。
まとめ
最後に、ポイントだけ整理します。
減価償却は「価値を測る仕組み」ではなく、
「費用を配分するための会計技術」
という点だけ持ち帰っていただければと思います。
減価償却は、税務上のルールと会計上の考え方が少し異なる分野です。
固定資産の処理で迷うことがあれば、お気軽にご相談ください。