出張手当は地味な制度ですが、正しく使えば節税効果が高い仕組みです。

そもそも出張手当とは?
出張手当とは、
- 役員や従業員が、
- 出張などにより遠方で業務を行う場合に、
- 現地で必要な経費(食費や通信費など)を補填する目的
で支給される手当のことを指します。
ポイントとしては、
- 出張手当の支給は、法律で義務付けられているわけではない
(支給要否は企業ごとの判断) - その条件は、企業ごとに定められた出張規程(ルール)による
の2点です。
交通費等を実費精算するのとは異なり、
- 規定の額を一律で支給する
- 領収書などは不要
- シンプルな経理が可能
といったメリットも存在します。
節税効果が高い理由
代表的な節税策の中に、この出張手当が位置付けられることが多くあります。
その理由は、
- 所得税や住民税、社会保険料の計算元から除かれる
からです。
どういうことか?
役員報酬の場合と比較して考えてみましょう。
前提条件
以下の前提条件を置きます。
- 役員1名
- 出張手当は妥当である
- 所得控除は「給与所得控除」「基礎控除」のみ
- 住民税の計算元となる所得は、所得税のものと同額とする
- 比較してイメージを掴むための計算である
計算結果
計算結果は下記のとおりです。
保険料や税金の計算分母から出張手当が除かれる分、手取り金額が増える結果となるのです。
※あくまで、出張規程があり、金額が社会通念上妥当な場合に限られます。

参考まで計算Excelファイルを添付しておきます。
よろしければ、構造を理解するためにも、試算してみることもおすすめです。
- 本記事で配布しているサンプルファイルは、考え方や作成方法を理解していただくための参考資料です。
- 記事執筆時点の内容に基づいて作成しており、正確性・網羅性・個別案件への適合性を保証するものではありません。
- 実際にご利用される際は、ご自身の状況に合わせて調整・確認を行ってください。
- 本サンプルの使用により生じたいかなる損害についても、当事務所は責任を負いません。
ポイント│規程&手当金額
さて、この出張手当ですが、もちろん無条件に認められるものはありません。
- 出張旅費規程を備えて、日当の金額を明記すること
- 日当金額が、世間相場からして不当に高額でないこと
といった点です。
①規程の作成
1点目の規程については、世の中にテンプレートもありますし、作成すること自体は難しいものではありません。
ただし、「誰が・いつ・どう決めたか」は説明できるようにしておきましょう。
具体的には、取締役会で承認・決議を行い、議事録を残しておく。
取締役会がない会社(ひとり会社など)では、代表取締役決定書などを作成し、記録を残しておきましょう。
といったものです。
②日当金額の設定
悩ましいのは日当金額の設定です。
法律や税務上の規定で明確にされているわけではなく、
いくらまでが妥当で、いくら以上が高すぎるか?
といった質問が後を絶ちません。
税務調査等で揉めたくない、という安全ラインを探るのであれば、
社長の国内出張費(日)は5,000円程度
としておくのが無難でしょう。
現在は実費精算に切り替わっていますが、内閣総理大臣の出張日当が以前は3,800円という規定があったり、
民間の調査(産労総合研究所など)による相場が以下のようになっており、参考にはなるかなと。
- 社長: 4,800円 〜 5,000円前後
- 役員: 4,000円 〜 4,500円前後
- 管理職(部長・課長): 2,500円 〜 3,000円前後
- 一般社員: 2,000円 〜 2,500円前後
あまりに高額で出張手当と認められない場合、上記であげた3点(社会保険料、所得税、住民税)のすべてに影響が出てくるため、慎重に設定することが必要でしょう。
また、
- 架空出張は当然NG(実際に出張していることが前提)
- 毎日出張扱いは不自然(出張頻度の妥当性は説明できるように)
- 毎月同額(給与認定されるリスク)
と言った点にも注意が必要です。
まとめ
- 出張手当は強力だが「規程」と「金額」が命
- 5,000円前後は安全寄り
- 雑にやると節税どころか逆効果
以上、何か参考になる点があれば嬉しいです。
では、また次回。