結論
事業年度の途中で役員報酬を減額しても、一定の場合には減額前・減額後の給与をそれぞれ定期同額給与として損金にできることがあります。
ただし、単に「売上が落ちた」「利益が予算を下回った」というだけで認められるものではありません。
ポイントは、会社の経営状況などから、役員報酬を減額せざるを得ない事情があったかです。
判断のポイント
法人税上、事業年度途中の役員報酬の減額が認められるケースとして、「業績悪化改定事由」による改定があります。
ここでいう「業績悪化」は、単に売上や利益の数字が前年より下がったという意味ではありません。
一時的な資金繰りの都合や、単なる業績目標の未達成だけでは足りず、会社を取り巻く状況から、役員報酬を減額せざるを得なかった事情があったかを確認する必要があります。
数字でイメージすると
たとえば、月額48万円の役員報酬を、事業年度の途中から月額36万円へ減額するケースを考えてみます。
これはあくまで説明用のモデルケースです。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 減額前の役員報酬 | 月額48万円 |
| 減額後の役員報酬 | 月額36万円 |
| 1か月あたりの減額 | 12万円 |
| 残り6か月の場合の支給額減少 | 72万円 |
この場合、会社から実際に支給する役員報酬は、残り6か月で72万円減ることになります。
しかし、「12万円減らした」「合計で72万円支給額が減った」という数字そのものから、税務上認められるかどうかを判断するわけではありません。
同じ48万円から36万円への減額でも、会社の事情によって税務上の結論が変わる可能性があります。
実務ではどう考えるか
実務では、減額率や赤字額だけで機械的に判断するのは避けた方がよいでしょう。
たとえば、売上が前年より10%減少した会社があったとしても、「10%減ったから業績悪化改定事由に当たる」という基準があるわけではありません。
反対に、赤字に転落したという事実だけで必ず認められるわけでもありません。
重要なのは、数字が悪化した結果として、会社がどのような状況になり、なぜ役員報酬を減額する必要が生じたのかです。
金融機関から経営改善を求められている、主要な取引先との関係から役員報酬の削減が必要になった、資金繰りが急激に悪化した、といった事情がある場合には、その経緯も含めて検討します。
減額する前に確認したいこと
- 売上・利益・資金繰りがどの程度悪化しているか
- その悪化が一時的なものではないか
- 前年や当初予算との比較だけで判断していないか
- 金融機関・株主・取引先など第三者との関係で減額が必要になっていないか
- なぜ役員報酬を減額する必要があったのか、資料で説明できるか
- 株主総会・取締役会等の必要な手続を行っているか
注意点
役員報酬を実際に減額できることと、その減額が税務上の「業績悪化改定事由」に該当することは別の問題です。
また、本文中の48万円、36万円、10%などの数字は、税務上の判断基準を示すものではありません。理解しやすくするための例示です。
期中で役員報酬を変更する場合には、変更後に税務処理を考えるのではなく、できれば実際に変更する前に、減額理由や会社の状況を整理しておくことをおすすめします。