A回答
Contents
結論
前期に法人税を納め、当期に税務上の赤字(欠損金)が生じた場合、一定の要件を満たせば、「欠損金の繰戻し還付」により前期の法人税の一部または全部の還付を受けることができます。
通常は一定の中小企業者等が対象となり、当期に生じた欠損金額を前期へ繰り戻して計算します。
過年度から持ち越している繰越欠損金の残高そのものを、さらに前の年度へ繰り戻す制度ではありません。
還付額はどう計算する?
還付額は、「前期の法人税額 × 当期に発生した欠損金額 ÷ 前期の所得金額」で計算します。
還付計算に使える欠損金額は前期の所得金額が上限となるため、当期の欠損金額が前期の所得金額以上であれば、前期に納めた法人税額が概算の上限となります。
具体的な事例を用いて見てみましょう。
事例① 欠損金額が前期の所得金額より少ないケース
前提
- 当期に発生した欠損金額:320万円
- 前期の法人税額:120万円
- 前期の所得金額:800万円
計算へのあてはめ
| 番号 |
項目 |
金額・計算 |
| ① |
当期に発生した欠損金額 |
320万円 |
| ② |
前期の法人税額 |
120万円 |
| ③ |
前期の所得金額 |
800万円 |
| ②×①÷③ |
還付額 |
120万円 × 320万円 ÷ 800万円 = 48万円
|
事例② 欠損金額が前期の所得金額を上回るケース
前提
- 当期に発生した欠損金額:1,000万円
- 前期の法人税額:120万円
- 前期の所得金額:800万円
計算へのあてはめ
| 番号 |
項目 |
金額・計算 |
| ① |
当期に発生した欠損金額 |
1,000万円 |
| ② |
前期の法人税額 |
120万円 |
| ③ |
前期の所得金額 |
800万円 |
| ④ |
還付計算に使える欠損金額 |
800万円 |
| ②×④÷③ |
還付額 |
120万円 × 800万円 ÷ 800万円 = 120万円
|
※④ 還付計算に使える欠損金額は、前期の所得金額が上限となります。
この事例では、当期に1,000万円の欠損金額が発生していますが、計算に使えるのは800万円までです。
なお、当期の欠損金のうち繰戻し還付に使わなかった部分は、
要件を満たせば原則10年間、翌期以降の所得から差し引くことができます。
利用するための主な要件
通常の繰戻し還付を利用する場合は、主に次の点を確認します。
- 前期から継続して青色申告をしていること
- 赤字となった事業年度の確定申告を期限内に行うこと
- 確定申告書とあわせて「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を提出すること
- 通常の適用対象となる中小企業者等に該当するかを確認すること
資本金が1億円以下であっても、大法人との資本関係やグループ通算制度の適用状況などによって取扱いが変わることがあります。
そのため、資本金だけでなく株主構成なども確認して判断します。
法人税以外の税金はどうなる?
地方法人税は、法人税の繰戻し還付に伴って一定額が併せて還付される仕組みとなっており、別途の還付請求手続は必要ありません。
また、2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用される防衛特別法人税についても、還付対象となる事業年度に確定した税額がある場合には、法人税の繰戻し還付に応じて還付される仕組みがあります。
一方、法人住民税や法人事業税には、法人税と同じ欠損金の繰戻し還付制度はありません。
これらは翌期以降の申告で繰越控除等の調整を行うことになります。
参考情報・根拠
7件
国税庁
No.5763 欠損金の繰戻しによる還付
概要
青色申告法人に欠損金額が生じた場合の繰戻し還付について、対象となる欠損金額、中小企業者等の範囲、適用要件、還付額の計算方法を示しています。通常の繰戻し還付では、欠損事業年度に生じた欠損金額を前の事業年度へ繰り戻して法人税の還付を請求します。
このFAQとの関係
当期に生じた欠損金額が繰戻し還付の対象となること、連続した青色申告、期限内申告、確定申告書と同時の還付請求書提出が必要であること、還付額の基本的な計算方法の根拠となります。
原文を見る ↗
国税庁
C1-52 欠損金の繰戻しによる還付の請求
概要
法人税の欠損金の繰戻し還付を請求する際の対象者、提出時期、提出先などを案内しています。また、法人税の還付がある場合、一定の地方法人税については特段の手続をせず併せて還付されることを示しています。
このFAQとの関係
確定申告時に還付請求書を提出する実務上の手続と、法人税だけでなく地方法人税にも還付が生じる場合があることを本文へ反映する根拠となります。
原文を見る ↗
国税庁
No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除
概要
青色申告事業年度に生じた欠損金について、原則10年間の繰越控除ができることや、繰戻し還付の計算の基礎とした欠損金額は繰越控除の対象から除かれることを示しています。
このFAQとの関係
当期の欠損金すべてを繰戻し還付に使わなかった場合、一定の要件のもとで残額を翌期以降へ繰り越せることを説明する根拠となります。
原文を見る ↗
その他
2025年12月26日
令和8年度税制改正の大綱
概要
令和8年度税制改正において、中小企業者の欠損金等以外の欠損金について、繰戻し還付制度を適用しない措置の期限を2年間延長することが示されています。令和8年度の改正法は2026年3月31日に成立・公布されています。
このFAQとの関係
国税庁のNo.5763は2025年4月1日現在の情報で改正前の期限が記載されているため、2026年9月時点の現行制度を確認するために参照しています。一定の中小企業者等以外については、引き続き繰戻し還付の適用が制限されることの根拠となります。
原文を見る ↗
通達・告示
法人税基本通達16-1-5 還付金額が所得等の金額に算入される時期
概要
法人税の欠損金の繰戻しによる還付に関連して、地方法人税および防衛特別法人税にも還付制度が設けられていることを確認できます。
このFAQとの関係
2026年4月1日以後開始する事業年度から適用される防衛特別法人税について、対象となる課税事業年度に確定税額がある場合には、法人税の繰戻し還付に伴って還付が生じる仕組みを本文へ反映する根拠となります。
原文を見る ↗
国税庁
防衛特別法人税に関する納付手続等について
概要
防衛特別法人税が2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用されることを案内しています。
このFAQとの関係
欠損金の繰戻し還付に関連する税目を整理する際に、防衛特別法人税が適用される事業年度を確認するための根拠となります。
原文を見る ↗
その他
法人事業税・法人都民税|仕事と税金
概要
地方税には法人税と同様の欠損金の繰戻し還付制度がなく、法人事業税や法人都民税では、その後の事業年度で繰越控除等の調整を行うことを説明しています。
このFAQとの関係
法人住民税・法人事業税について、法人税と同じ仕組みで直ちに還付されるわけではないことを本文で説明するための参考となります。
原文を見る ↗
ご自身の状況に当てはめて確認したい方へ
個別の事情を確認しながら判断したい場合は、以下のサービスをご利用いただけます。
← 税務・経理のよくあるご相談一覧へ