FAQ No.048

親から個人事業を引き継いだ場合、売上や経費はどう処理しますか?

ご相談内容
親が個人事業を廃業し、子が同じ事業を引き継ぎました。
売上や未回収の代金はどちらの帳簿に記録すればよいでしょうか。
また、親名義の建物・設備・水道光熱費や、引き継いだ在庫の経理処理についても知りたいです。
回答
Contents

結論

親から子へ個人事業を引き継いだ場合、売上や売掛金は、原則として事業を引き継ぐ前と後で区分して処理します。

また、親が所有する資産を無償で借りる場合と、資産そのものを譲り受ける場合では、税務上の取扱いが異なります。

主な取扱いをまとめると、次のとおりです。

分類 項目 基本的な取扱い
売上・債権 売上・債権 売上 原則として、引継ぎ前は親、引継ぎ後は子が売上を計上する
売上・債権 売掛金 親の事業で発生した売掛金は、原則として親が売上に計上し、入金されたときに回収として処理する
資産・経費 資産・経費 土地・建物、機械・備品 親から無償で借りて使うだけなら、通常は贈与税がかからない
資産・経費 減価償却費・固定資産税 親子が生計を一にしている場合、事業で使っている分を子の経費にできることがある
資産・経費 水道光熱費 事業で使った分を合理的に計算する。経費にできるかどうかは、親子の生計関係によって異なる
資産・経費 商品などの在庫 無償でもらう場合、親の所得税と子の贈与税について確認が必要
税務申告 税務申告 親の確定申告 親が事業をやめた年も、所得税や消費税の申告が必要か確認する

売上・売掛金は引き継ぎの前後で区分する

事業を引き継ぐ前に親が行った取引の売上は、原則として親の事業収入になります。廃業後に入金されても、すでに売上を計上していれば、入金時は売掛金の回収として処理します。

一方で、引き継いだ後の取引による売上は、原則として子の事業収入です。

請求書や入金口座が親名義のままであっても、名義だけで判断せず、実際に誰が事業を行い、売上を受け取る権利を持っているかを確認します。

親が子の売上を代わりに受け取った場合は、親子間で資金を精算し、それぞれの帳簿にも記録します。

土地・建物や機械・備品を無償で使う場合

親が所有する土地・建物や機械・備品を、子が無償で借りて事業に使用する場合は、
一般的に「使用貸借」として整理できます。

使用貸借とは?

使用貸借とは、
物を無償で借りて使い、後で返すことです。

所有権は移らないため、
通常、資産そのものに贈与税はかかりません。

減価償却費などの経費については、
親子の生計関係によって取扱いが異なります。

所有権を親に残したまま使用するのであれば、通常、資産そのものの贈与には該当しません。

ただし、資産そのものを無償でもらう場合は、贈与に該当するため注意が必要です。

親名義の資産や費用を子の経費にできるか

親名義の資産や費用については、親子が生計を一にしているかどうかによって、経費の取扱いが変わります。

また、減価償却費・固定資産税と水道光熱費では、確認するポイントが異なります。

減価償却費・固定資産税

親子が生計を一にしている場合、親が所有する建物や機械・備品について、減価償却費や固定資産税の事業使用部分を子の経費にできる場合があります。

ただし、親に支払った家賃などを、そのまま子の経費にすることは原則としてできません。

一方、親子が生計を別にしている場合は、原則として、親が所有する資産の減価償却費を子の経費にすることはできません。

なお、減価償却費の計算では、親の固定資産台帳を確認し、取得価額や過去の償却状況を踏まえて計算します。

水道光熱費

電気代や水道代などは、契約名義が親のままでも、事業で使った分を経費にできる場合があります。

親子が生計を一にしている場合は、親への支払額をそのまま経費とするのではなく、実際に発生した水道光熱費のうち、事業で使った分を計算します。

生計を別にしている場合は、子が実際に負担した事業使用部分について、経費にできるかを検討します。

いずれの場合も、請求書を保存し、店舗の面積や設備の使用状況などを基に、
事業で使った割合を合理的に計算しておくことが重要です。

商品などの在庫を引き継ぐ場合

商品や材料などの在庫そのものを親から子へ無償で譲渡した場合は、使用貸借とは異なります。

親側では、原則として贈与時の価額を事業所得の収入に計上する必要があります。

また、子側では贈与税の課税関係や、引き継いだ在庫の取得価額を確認する必要があります。

そのため、無償で借りて使用する資産と、所有権も含めて引き継ぐ資産を区別して管理することが大切です。

廃業した親の確定申告も確認する

親が年の途中で個人事業を廃業していても、その年の所得について確定申告が必要になる場合があります。

所得税は原則として1月1日から12月31日までの所得を基に計算するため、廃業日までの売上や経費を整理し、申告の必要性を確認します。

また、親が消費税の課税事業者であった場合は、廃業した年の消費税の確定申告も必要です。
廃業によって事業用資産でなくなった資産については、消費税のみなし譲渡の取扱いにも注意が必要です。

事業を引き継ぐときに整理しておきたいこと

親子間の事業承継では、次の資料を確認しておきましょう。
経理の整理が進めやすくなります。

  • 事業を引き継いだ日と、その前後の売上・経費の記録
  • 売掛金・買掛金などの未精算残高
  • 土地・建物や機械・備品の所有者と使用条件
  • 固定資産台帳と過去の減価償却状況
  • 引き継いだ商品・材料などの在庫の内容と移転条件
  • 親子が生計を一にしているかどうか

まずは、「誰の収入か」「誰の資産か」「誰が費用を負担するか」を整理し、
親子それぞれの帳簿に正しく反映させましょう。

参考情報・根拠 9件
国税庁 No.4552 親の土地に子供が家を建てたとき
概要
親の土地を地代や権利金の支払いなしで使用する場合の贈与税と相続税の取扱いを説明しています。土地の使用貸借による使用権の価額はゼロとして取り扱われ、借地権相当額に贈与税は課税されません。
このFAQとの関係
親の土地を子が無償で使用する場合、土地の所有権や借地権を贈与されたものとして扱う必要がないことを確認できます。なお、この資料は土地の使用貸借に関するもので、建物や機械・備品の取扱いを直接説明したものではありません。
法令 所得税法(昭和40年法律第33号)第12条・第36条・第40条・第56条
概要
第12条では、事業から生じる収益の実際の帰属者に課税する原則を定めています。第36条では収入金額の計算、第40条では棚卸資産の贈与等、第56条では生計を一にする親族が事業から対価を受ける場合の必要経費の取扱いを定めています。
このFAQとの関係
親子間で事業を引き継ぐ際の売上の帰属、在庫の無償譲渡、親族への支払いに関する基本的な法的根拠です。請求名義や家族間の取り決めだけで税務処理を決めるのではなく、実際の権利関係や生計の状況を確認する必要があります。
国税庁 No.2200 収入金額とその計算
概要
収入金額は、実際に現金を受け取ったかどうかだけでなく、収入を受け取る権利が確定した時期を基準として計算することを説明しています。また、事業の商品を贈与した場合には、原則として通常の販売価額を収入金額に算入する取扱いも示しています。
このFAQとの関係
親の事業で発生した売上は、廃業後に入金されても原則として親の収入になることを確認できます。また、事業用の在庫を子に無償で譲渡した場合、親の側で収入計上が必要となる根拠にもなります。
国税庁 No.2210 必要経費の知識
概要
事業所得の必要経費にできる費用の範囲や計上時期、家事関連費の取扱いを説明しています。店舗併用住宅の水道光熱費などは、事業に使用した部分を明確に区分できる場合に、その金額を必要経費にできます。また、生計を一にする親族へ支払う地代家賃等と、親族所有の資産に係る固定資産税等の取扱いも示しています。
このFAQとの関係
親名義の水道光熱費について、事業に使用した部分を合理的に計算する必要があることを確認できます。また、生計を一にする親族への支払いをそのまま経費にできないことと、親族が所有する事業用資産に係る費用を経費にできることの違いを整理できます。
通達・告示 法第56条《事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例》関係(所得税基本通達56-1)
概要
生計を一にする親族が所有する資産を無償で事業に使用させている場合について、一定の費用を事業主の必要経費に算入する取扱いを定めています。
このFAQとの関係
親子が生計を一にしている場合、親が所有する建物や機械・備品を子の事業で無償使用していても、その資産に係る減価償却費などを子の必要経費に算入できる根拠となります。生計を別にしている場合には、この通達による取扱いは適用されません。
国税庁 No.2100 減価償却のあらまし
概要
建物や機械装置、器具備品などの減価償却資産について、取得価額を使用可能期間にわたって必要経費に配分する仕組みを説明しています。資産の種類や取得時期などによって償却方法が異なることも示しています。
このFAQとの関係
親が所有する固定資産を子の事業で使用する場合に、取得価額や過去の償却状況を確認して減価償却費を計算する必要があることを理解できます。土地は減価償却の対象になりません。
通達・告示 法第39条《たな卸資産等の自家消費の場合の総収入金額算入》関係(所得税基本通達39-1・39-2)
概要
事業用の棚卸資産を家事消費した場合や贈与した場合の収入金額について、原則として通常の販売価額によることを示しています。また、一定の条件を満たす場合の収入計上金額の取扱いも定めています。
このFAQとの関係
親が事業用の在庫を子に無償で引き渡した場合、親の事業所得の計算上、収入金額への算入を検討する必要があることを確認できます。建物や備品を無償で貸す場合とは区別して考える必要があります。
国税庁 No.2020 確定申告
概要
所得税の確定申告は、原則として1月1日から12月31日までの1年間の所得と所得税額を計算する手続きであることを説明しています。また、確定申告が必要となる条件や申告期限も示しています。
このFAQとの関係
個人事業を年の途中で廃業した場合でも、廃業した年の所得について確定申告が必要になる場合があることを確認できます。廃業届の提出と、その年の所得税の確定申告は別の手続きです。
国税庁 No.6603 個人事業者が事業を廃止した場合
概要
個人事業者が廃業した場合の消費税に関する届出や確定申告の取扱いを説明しています。廃業した人が消費税の課税事業者である場合には、廃業した年の消費税申告が必要です。また、廃業に伴って事業用資産でなくなった資産については、消費税のみなし譲渡の取扱いが生じることを示しています。
このFAQとの関係
親が個人事業を廃業した場合、所得税だけでなく、消費税の申告や事業用資産の取扱いも確認する必要があることを示しています。特に、廃業後も親が所有する固定資産については、廃業時点の状況に応じて消費税の課税関係を判断する必要があります。

ご自身の状況に当てはめて確認したい方へ

個別の事情を確認しながら判断したい場合は、以下のサービスをご利用いただけます。

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