FAQ No.056

源泉所得税の徴収を忘れた場合、会社が負担してもよいですか?

ご相談内容
個人への業務委託報酬を支払う際、源泉所得税を差し引かずに全額振り込んでしまいました。
あとから源泉徴収漏れに気づいたのですが、取引先に返金を求めず、会社が負担することはできますか。
その場合の納付額や会計処理についても教えてください。
回答
Contents

結論

源泉徴収を忘れた場合でも、支払者には源泉所得税の納付義務があります。

受取人から税額を回収することもできますが、会社が負担する場合は、追加の源泉所得税が発生することがあります。

源泉徴収せずに報酬を支払った
当初から会社が源泉所得税を負担する約束だった?
はい

支払った金額を手取り額として、源泉所得税を再計算・納付します。

いいえ

当初の報酬に対する源泉所得税を計算・納付します。

納付した税額を受取人から回収する?
回収する

受取人に請求・精算します。

回収しない

会社負担分を追加報酬として、源泉所得税を再計算・納付します。

源泉徴収漏れに気づいたら

まず、支払った報酬が源泉徴収の対象となるかを確認します。

個人への報酬であっても、すべてが対象となるわけではありません。

源泉徴収の対象額は原則として税込金額ですが、請求書などで消費税が明確に区分されていれば、税抜金額を対象として計算することもできます。

  • 消費税の区分あり:報酬80,000円+消費税8,000円 → 源泉所得税8,168円
  • 消費税の区分なし:報酬88,000円(税込) → 源泉所得税8,984円

※いずれも源泉徴収税率10.21%が適用される報酬の例です。

源泉所得税の納期限は原則として支払月の翌月10日です。
期限を過ぎている場合は早めに納付しましょう。
不納付加算税や延滞税が生じることもあるからです。

具体例|徴収し忘れた税額を会社が負担する場合

報酬80,000円+消費税8,000円の請求に対し、源泉所得税を差し引かず88,000円全額を支払ったとします。

当初は会社負担の約束がなく、その後、会社が源泉所得税を納付して受取人から回収しないことを決めたケースです。

① 当初の源泉所得税
80,000円 × 10.21%
8,168円
② 追加報酬の総額
8,168円 ÷(1-10.21%)を円単位で調整
9,096円
③ 追加報酬に対する源泉所得税
9,096円 × 10.21%(1円未満切捨て)
928円
会社が納付する源泉所得税の合計 9,096円

当初分8,168円+追加分928円

追加報酬9,096円から源泉所得税928円を差し引くと、会社が回収しない8,168円と一致します。

納付時期と仕訳例

当初分8,168円は当初の報酬支払月に対応します。

追加分928円は、当初分を納付した後、受取人から回収しないことを決めた時点の追加報酬に係る税額です。

支払月が異なる場合は、所得税徴収高計算書も月ごとに作成します。

会計上は、当初分をいったん立替金として処理した場合、次のような仕訳になります。

① 当初の源泉所得税を納付
借方
貸方
② 受取人から回収しないことを決定
借方
貸方
③ 追加の源泉所得税を納付
借方
貸方

※当初の報酬の仕訳は省略しています。追加報酬の消費税区分や費用の計上年度は、個別の事情に応じて確認が必要です。

参考情報・根拠 6件
通達・告示 所得税基本通達221-1(支払者が税額を負担する場合の税額計算)
概要
源泉所得税を徴収していなかった場合について、当初から支払者が税額を負担する契約だったケースと、それ以外のケースを区別しています。後者では、当初の支払金額を基準に源泉税額を計算し、その税額を納付した支払者が回収しないこととしたときは、追加の支払いがあったものとして源泉税額を計算するとされています。
このFAQとの関係
源泉徴収漏れの後に会社が税額を負担する場合、当初の報酬と追加負担分を分けて考える根拠となります。また、追加報酬の支払時期を判断する際には、当初の源泉税の納付と回収しないことを決めた時期が重要になることを確認できます。
通達・告示 所得税基本通達181~223共-4(源泉徴収の対象となるものの支払額が税引手取額で定められている場合の税額の計算)
概要
源泉徴収の対象となる給与や報酬などの支払額が税引手取額で定められている場合には、その手取額を税込みの金額に逆算して源泉徴収税額を計算することとされています。この計算方法は一般にグロスアップと呼ばれます。
このFAQとの関係
支払者が源泉所得税を負担することによって追加報酬が生じる場合、その税額を単純に追加納付するだけではなく、税引手取額から逆算して源泉所得税を計算する根拠となります。
法令 所得税法(昭和40年法律第33号)第222条(不徴収税額の支払金額からの控除及び支払請求等)
概要
源泉徴収を行わず、税務署から税額を徴収された場合や、徴収しないまま納期限後に納付した場合には、一定の条件のもとで、その未徴収税額に相当する金額を受給者へのその後の支払額から控除し、または受給者に支払請求できることを定めています。
このFAQとの関係
源泉徴収を忘れた会社が、納付した税額を報酬の受取人から回収する方法について確認できます。会社が回収せずに負担するケースと、回収するケースを区別する根拠となります。
通達・告示 法人税基本通達9-5-3(強制徴収等に係る源泉所得税)
概要
法人が源泉徴収をしないまま所得税を納付し、その税額を租税公課等として損金経理した場合には、元の配当や給与等の区分に応じて追加支払いがされたものとして取り扱うことを示しています。一方、仮払金等として経理し、受給者に求償する場合の取扱いも示されています。
このFAQとの関係
業務委託報酬に係る源泉所得税を会社が負担する場合、その税額を単なる租税公課ではなく、元の報酬に対応する追加支払いとして処理する考え方の根拠となります。受給者から回収する場合には、仮払金等として区分する取扱いも確認できます。
国税庁 No.2110 事業主がしなければならない源泉徴収
概要
源泉徴収制度の基本的な仕組みと、所得の支払者が所得税を徴収して納付する義務について説明しています。源泉所得税の納期限は原則として支払月の翌月10日であり、所得税徴収高計算書を用いて納付することが示されています。
このFAQとの関係
報酬の支払時に源泉徴収を忘れても、支払者の納付義務がなくなるわけではないことを理解するための基本資料です。また、当初の報酬に係る源泉所得税の納期限と納付方法を確認できます。
国税庁 No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは
概要
個人などに支払う報酬・料金のうち、源泉徴収の対象となるものを説明しています。また、源泉徴収の対象金額は原則として消費税等を含めた金額ですが、請求書等で報酬額と消費税額が明確に区分されている場合には、報酬額のみを対象として差し支えないことが示されています。
このFAQとの関係
源泉徴収漏れが判明した際、そもそもその報酬が源泉徴収対象なのかを確認する根拠となります。また、当初の源泉所得税を再計算する際、請求書上の消費税の記載方法を確認する必要があることも分かります。

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