『小規模企業共済への加入』は、個人事業主、法人役員ともに節税策として利用できます。
その内容をまとめてみます。

小規模企業共済とは何か?
ひとことで言うと、
『中小企業の経営者や個人事業主のための退職金制度』
です。
①加入条件
加入できるのは、以下の条件を満たす『個人事業主』または『中小企業の経営者』です。
- 建設業、製造業、不動産業:従業員20人以下
- 商業、サービス業:従業員数5人以下
『ひとりで独立している方であれば、対象になる』とご理解頂ければ。
なお、法人として加入するものではなく、『個人として加入する制度』です
②毎月の支出(掛け金)
以下、ポイントを挙げてみます。
- 1,000円~70,000円/月の範囲内で、500円単位で設定が可能
- 加入した後でも、掛け金を変更可能
- 加入者からの預金口座からの振替
③脱退時の受取(共済金)
基本的なポイントは、以下の3点です。
- 脱退時の受取額=『①基本共済金+②付加共済金』
- 任意解約は20年未満だと元本割れするため、継続が基本❗
- 受取方法は選択可能(一括or分割)
受取額の詳細は以下。
基本的には、『掛けた金額が戻って来る』と捉えて頂ければ。
①基本協賛金=『掛金月額×掛金納付月数×%(脱退理由による)』
②付加共済金=運用実績によって増減
(👉①の基本共済金が99%占めるため、無視してもOK)
また、受取方法によって税金の計算方法が変わります。
(一括であれば退職所得、分割であれば雑所得)
退職所得の方が圧倒的に有利(退職所得控除が手厚い)なため、
一括受取りがおすすめです。
メリット(節税になる理由、借入もできる)
①節税になる理由
節税になる理由は、
- 掛け金分を、利益(所得)から減らして税金の計算ができる。
- 受取時にも、税金計算上で優遇される点がある。
の2点です。
具体的には、中小機構のHPにて、節税効果などの試算ができますので試してみて頂ければ。
試算に必要な情報は以下の4点です。
- 現在の年齢
- 脱退時の年齢
- 毎月の掛け金
- 所得金額
このような形で結果を見ることができます。
②節税以外のメリット:借入
また、節税以外のメリットもあり、
『掛け金の積立額まで』の借入が可能。
という点も大きな利点だと思います。
注意したいこと
①余裕資金で取り組もう
節税策の全般に入れることですが、
節税自体を目的にしないこと
が重要です。
この制度の活用は、
- 支出が伴う(資金繰りにはマイナス)
- 途中で脱退は基本NG(20年未満だと元本割れ)
といったように、キャッシュ・アウトがあるため、余裕資金をもって活用することを念頭に置きましょう。
②法人役員の場合の注意点とシミュレーション
また、法人役員の場合は以下の点に注意が必要です。
- 掛け金は個人負担(法人経費にならない)
- 役員報酬を増額して拠出すると、二重節税効果あり
→ 法人:役員報酬が損金算入
→ 個人:掛金が所得控除 - 役員報酬を増額すると、社会保険料が増加
(役員報酬+84万円 → 社会保険料約+25万円)
そのため、『トータルの手取りでシミュレーション』が必須です。
- 現在の役員報酬:500,000円
- 現在の年間所得金額:5,000,000円
と仮定して、
- 掛け金:500~70,000円
- 役員報酬の同額増加:あり/なし
でシミュレーションしてみると、このような形です。

役員報酬を増加させた分、個人の所得税・社会保険料が大きくなります。
そのため、
『役員報酬の増加はせず、掛け金を70,000円』

とすることが最適解になりそうです。
(もちろん、資金の余裕度を考えてになりますが)
※シミュレーションファイルを付けておきます。
(記事中のものは給与所得控除が反映できておらず、修正済み)
小規模企業共済_シミュレーション.xlsx
個別の状況等に合わせた設定や、VBAを使ったシミュレーションは個別コンサルティングでも提供できます。
では、また次回。