A回答
Contents
結論
家族で一緒に事業をしている場合、売上を誰が申告するかは、
「実際に誰がその事業を経営しているか」で考えます。
家族で仕事を分担し、売上金も分けている場合でも、
受け取った金額をそのままそれぞれの売上として申告するのではなく、
まず「実際の事業の形」を確認します。
税務上は、販売サイトや入金口座の名義だけではなく、事業の方針を誰が決めているか、事業資金を誰が負担・管理しているか、受注や取引先とのやり取りを誰が行っているか、収支を誰が管理しているかなどを踏まえて判断します。
共同事業としてそれぞれが申告する場合
家族それぞれが共同で事業を行う意思を持ち、事業の意思決定に主体的に関わり、それぞれの役割を担っている場合には、共同事業として整理することが考えられます。
この場合、それぞれの役割や負担などを踏まえて所得の分け方を整理し、
それぞれが自分に帰属する所得を申告します。
単に作業を分担している、入金されたお金を後から半分ずつ分けているというだけでは、共同事業として整理する根拠としては弱いです。
共同事業として行うのであれば、
- 誰がどのような役割を担うのか
- 事業の意思決定をどのように行うのか
- 費用を誰が負担するのか
- 利益や損失をどのように分けるのか
などを、あらかじめ整理しておくことが大切です。
共同事業にするかどうかは自由に選べる?
「それぞれで申告したいから共同事業にする」
「共同事業にしたくないから一人の事業にする」
というように、申告方法だけを先に決めるものではありません。
実際にどのように事業を行っているのかを確認し、その実態に合わせて整理します。
一人の事業を家族が手伝っている場合
- 一人が販売方針を決め、事業資金や収支を管理し、受注や取引先とのやり取りなど事業全体を管理
- もう一人の家族が製作や事務などを担当している
こういった形式であれば、共同事業ではなく、一人を事業主として整理する可能性が高めです。
販売サイトや入金口座の名義よりも、実際に誰が事業を動かしているかが重要です。
実際の判決・裁決例でも、事業所得が誰に帰属するかについて、契約などの名義だけではなく、
事業への出資、収支の管理、事業資金の調達・管理、従業員への指揮監督などを踏まえて、誰が実際の経営主体なのかが総合的に判断されています。
たとえば、このような事例があります。
| 事例 |
判断 |
主張と判断 |
|
広島地裁
平成19年5月9日判決
|
共同事業と認定
|
納税者側の主張
兄との関係は組合に近い共同事業であり、
牡蠣養殖販売業の所得をすべて自分だけの所得とするのは適切ではないと主張。
裁判所の判断
兄弟で事業用資産をほぼ半分ずつ出し合い、
それぞれが営業と生産という重要な役割を担当。
事業の基本方針も双方の合意で決めていたことなどから、
共同事業であると認められた。
|
|
国税不服審判所
平成26年8月1日裁決
|
共同事業と認めず
|
納税者側の主張
本人・妻・義母の3人による共同事業であり、
事業所得はそれぞれ3分の1ずつ帰属すると主張。
審判所の判断
商品の買付けや取扱量など、事業の重要な判断は主に本人が行っていた。
妻・義母の業務は補助的・従属的であり、
3分の1ずつという分配割合にも合理的な根拠がないとして、
共同事業とは認められなかった。
|
ひとりが事業主となる場合、「生計を一にするか」も確認
一人を事業主とする場合、家族への製作代や給与などの取扱いは、その家族と「生計を一にしているか」も確認します。
生計を一にする親族へ事業から対価を支払っても、
原則としてその金額を通常の外注費や給与として必要経費にすることができないからです。
青色申告であれば青色事業専従者給与、
白色申告であれば事業専従者控除について、それぞれ要件を満たすか確認します。
まず確認したいこと
「売上を家族で分けているから、その割合で申告する」と決めるのではなく、
実際の事業の進め方を整理したうえで、誰が申告するのかを考えましょう。
- 事業の方針や重要なことを誰が決めるか
- 受注や契約、取引先とのやり取りを誰が行うか
- 事業資金や経費を誰が負担・管理するか
- 家族それぞれがどのような役割を担うか
- 利益や損失をどのように分けるか
参考情報・根拠
8件
通達・告示
法第12条《実質所得者課税の原則》関係(所得税基本通達12-2・12-5)
概要
事業から生じる収益が誰に帰属するかは、その事業を経営していると認められる者が誰かによって判定することを示しています。また、生計を一にする親族間では、事業の経営方針の決定について支配的な影響力を持つ者を事業主と推定する取扱いが示されています。
このFAQとの関係
販売サイトや入金口座の名義、作業の分担だけで売上の申告者を決めるのではなく、誰が実際に事業を経営しているのかを確認する必要があることの根拠となります。
原文を見る ↗
通達・告示
〔組合の所得計算〕(所得税基本通達36・37共-19~20)
概要
民法上の任意組合等が行う事業について、各組合員に帰属する利益または損失は、損益分配割合に応じて計算することを示しています。ただし、その割合が出資状況や事業への寄与状況などからみて経済的合理性を欠く場合は、この取扱いによらないこととされています。
このFAQとの関係
実際に共同で事業を営む関係が成立している場合には、単に入金額を分けるのではなく、共同事業の内容や損益分配の取決めに基づいて各人の所得を整理する必要があることの参考となります。
原文を見る ↗
法令
所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第56条・第57条
概要
第56条では、生計を一にする配偶者その他の親族が事業から対価を受ける場合、その対価を原則として事業主の必要経費に算入せず、受け取った親族側でもその対価等を所得計算上ないものとする取扱いを定めています。第57条では、一定の要件を満たす事業専従者について、その例外となる取扱いを定めています。
このFAQとの関係
一人を事業主と整理し、生計を一にする家族がその事業を手伝って対価を受け取る場合に、通常の外注費や給与と同じ処理をそのまま行えないことの法的根拠となります。
原文を見る ↗
国税庁
No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除
概要
生計を一にする親族に支払う給与は原則として必要経費にならない一方、青色申告者については一定の要件と届出を満たす青色事業専従者給与、白色申告者については一定の要件を満たす事業専従者控除が設けられていることを説明しています。
このFAQとの関係
家族が独立した事業主ではなく、一人の事業主の事業に専ら従事している場合に、どの制度を検討することになるのかを具体化する資料です。
原文を見る ↗
国税庁
No.1180 扶養控除 「生計を一にする」の意義
概要
「生計を一にする」は必ずしも同居を要件とせず、別居していても継続的な生活費等の送金がある場合などは該当するとしています。また、同じ家屋で生活している親族は、明らかに独立した生活を営んでいる場合を除き、生計を一にするものとして取り扱うことを示しています。
このFAQとの関係
所得税法56条・57条の適用を考える際に重要となる「生計を一にする親族」に該当するかを判断するための根拠となります。
原文を見る ↗
判例・裁判例
税務訴訟資料 第264号-28(順号12409) 静岡地方裁判所 平成26年2月13日判決
概要
親族2人が同じ事業に従事し、一方の親族名義の銀行口座にも取引先から代金が振り込まれていた事例です。裁判所は、受注や仕事の管理、取引先からの指示やミス発生時の連絡先、親族への報酬の決め方、口座への振込開始後も業務形態が変わっていなかったことなどを確認し、実際に事業を経営していた者に売上が帰属すると判断しました。
このFAQとの関係
家族名義の口座へ売上を振り込んだり、家族間でお金を分けたりした事実だけでは、各人が独立した事業主であるとは判断されないことを具体的に示す事例です。実務では、誰が受注・管理・取引先対応を行い、どのように報酬を決めているのかなど、実際の事業運営を確認することが重要だと分かります。
原文を見る ↗
国税庁
実質所得者課税に関する一考察―所得税における所得の帰属判定を中心に―
概要
所得税における所得の帰属について、裁判例などをもとに判断要素を整理した税務大学校論叢です。広島地方裁判所平成19年5月9日判決について、兄弟で事業用資産をほぼ半分ずつ出資し、それぞれが営業と生産という事業上重要な役割を担当し、事業の基本方針も双方の合意で決めていたことなどから、共同事業として認められた事例を紹介しています。
このFAQとの関係
家族や親族による事業が共同事業と認められるかについて、出資、事業への主体的な関与、経営方針の意思決定、役割分担などが重要になることを具体的に確認できる資料です。本文で紹介している広島地方裁判所平成19年5月9日判決の判断内容を確認する参考となります。
原文を見る ↗
国税不服審判所・裁決
平成26年8月1日裁決(熊裁(所・諸)平26-1)
概要
本人・妻・義母が営む事業について、3人による共同事業として所得をそれぞれに帰属させることができるかが争われた裁決です。商品の買付けや取扱量の決定など事業の重要な判断を主に本人が行い、妻・義母の役割は付随的・従属的であったことや、所得を3分の1ずつ分ける割合にも合理的な根拠が認められなかったことから、共同事業には該当せず、所得は本人に帰属すると判断されました。国税不服審判所の裁決要旨検索システムでは、裁決番号「平260001」で確認できます。
このFAQとの関係
家族で仕事を分担し、収益を分けているだけで共同事業として扱えるかを判断する際に、それぞれが事業の意思決定に主体的に関与しているか、どのような役割を担っているか、所得の分配割合に合理的な根拠があるかなどを確認する必要があることを具体的に示す裁決です。本文で紹介している「共同事業と認められなかった事例」の根拠となります。
原文を見る ↗
ご自身の状況に当てはめて確認したい方へ
個別の事情を確認しながら判断したい場合は、以下のサービスをご利用いただけます。
← 税務・経理のよくあるご相談一覧へ