FAQ No.029

少額減価償却資産の特例を使った資産を売却すると、何所得になりますか?

ご相談内容
個人事業で、中小事業者の少額減価償却資産の特例を使い、取得時に全額を必要経費にした事業用資産を売却しました。
売却による所得は事業所得になるのでしょうか、それとも譲渡所得になるのでしょうか。
回答
Contents

結論

一定の要件を満たす個人事業主は、パソコンなどを買ったときに「少額減価償却資産の特例」を使って、購入金額の全額を経費にできます。

この特例を使って全額を経費にした事業用の資産をあとで売った場合、通常の事業用固定資産であれば、原則として「譲渡所得(総合課税)」として計算します。

事業で使っていた資産だからといって、売却したときの収入がすべて事業所得になるものではなく。

パソコンや機械、器具備品などの事業用資産を売った場合は、
原則として「譲渡所得」になると考えておくと分かりやすいです。

10万円未満の資産などは、売ったときの扱いが異なります

ただし、購入時の処理によっては例外があります。

特に、

  • 10万円未満で、購入時に全額を経費にした資産
  • 一括償却資産として処理した資産

は、売ったときの所得の扱いが異なります。

違いを表でまとめると、次のとおりです。


確認項目 通常の
減価償却資産
取得価額
10万円未満※1
一括償却資産※1・※2 少額減価償却資産の
特例を使った資産※3
具体例 通常の方法で減価償却している
パソコン・スマホなど
購入時に全額を経費にした
10万円未満のパソコン・スマホなど
一括償却資産として処理した
パソコン・スマホなど
少額減価償却資産の特例を使って、
購入時に全額を経費にしたパソコン・スマホなど
買ったときの処理 耐用年数に応じて
少しずつ経費にする
原則として購入金額の
全額を経費にする
購入金額を
3年間で均等に経費にする
一定の要件のもと、購入金額の
全額を経費にする
売ったときの
所得
原則として、譲渡所得として扱います。※4 原則として、
事業所得または雑所得として扱います。※1
原則として、
事業所得または雑所得として扱います。※1
原則として、譲渡所得として扱います。※4

※1 10万円未満の減価償却資産や一括償却資産でも、「業務の性質上、基本的に重要なもの」に当たる場合は、原則として譲渡所得になります。簡単にいうと、その仕事をするために直接必要で、仕事を続けるうえで欠かせない資産などが該当します。
※2 一括償却資産とは、取得価額10万円以上20万円未満の減価償却資産について、3年間で均等に経費にする方法を選んだ資産です。
※3 2026年4月1日以後に取得した資産については、一定の要件のもと、取得価額10万円以上40万円未満の資産が少額減価償却資産の特例の対象となります。
※4 資産を繰り返し売ることがその事業では通常である場合などは、事業所得として扱うことがあります。


このように同じパソコンやスマホでも、買ったときの金額や、どの方法で経費にしたかによって、売ったときの税金の扱いが変わります。

購入時に全額を経費にした金額は、売却時にもう一度差し引けません

譲渡所得を計算するときは、通常、売却代金からその資産を買ったときの金額などを「取得費」として差し引きます。

ただし、少額減価償却資産の特例を使って購入金額の全額をすでに経費にしている場合、その金額を売却時にもう一度「取得費」として差し引くことはできません。

そのため、全額を経費にしている場合は、基本的に取得費は0円となり、売却代金から売却に直接かかった費用などを差し引いて譲渡所得を計算します。

数値例
  • 2026年4月1日以後にPCを30万円で購入
  • 少額減価償却資産の特例を使い、30万円全額を経費にした
  • 後日、12万円で売却した

この場合、購入したときの30万円はすでに経費にしているため、売却時にもう一度30万円を差し引くことはできません。

 売却代金12万円 - 取得費0円 = 譲渡益12万円(特別控除前)

※売却手数料など、売るために直接かかった費用があれば、その金額は差し引きます。

なお、総合課税の譲渡所得には年間50万円の特別控除があります。
ほかに総合課税の譲渡所得がなければ、この例の12万円は50万円の特別控除の範囲内です。

また、資産を5年を超えて持っていた場合は「長期譲渡所得」となり、50万円を差し引いたあとの金額の2分の1を、ほかの所得と合計して税金を計算します。

特例を使える金額は、買った時期によって異なります

少額減価償却資産の特例で全額を経費にできる資産の金額は、取得した時期によって異なります。

2026年4月1日以後に取得した資産は40万円未満が基準です。
それより前は30万円未満でした。

実際に売却したときは、

  • 資産の種類
  • 購入日
  • 売却日
  • 購入時にどの方法で経費にしたか

固定資産台帳や青色申告決算書などで確認して処理するようにしましょう。

参考情報・根拠 4件
国税庁 No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法
概要
資産の譲渡による所得は原則として譲渡所得となり、機械器具なども対象資産に含まれることを示しています。一方、取得価額10万円未満の減価償却資産や一括償却資産などは、一定の場合を除き、事業所得または雑所得として扱うことが示されています。
このFAQとの関係
事業用の固定資産であっても、売却した場合は原則として譲渡所得になること、および10万円未満の資産や一括償却資産がその例外となることの根拠となります。
法令 租税特別措置法 第28条の2(中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例)
概要
一定の中小事業者である青色申告者について、2026年4月1日以後に取得する取得価額40万円未満の一定の減価償却資産について、取得価額を必要経費に算入できる特例を定めています。また、この特例により必要経費に算入した金額は、その少額減価償却資産の取得価額に算入しないことも定めています。
このFAQとの関係
少額減価償却資産の特例が、10万円未満の少額資産や一括償却資産とは別の制度であること、および特例で取得価額の全額を必要経費にした場合には、その金額が売却時の取得費として残らないことの根拠となります。
国税庁 No.3152 譲渡所得の計算のしかた(総合課税)
概要
土地・建物や株式等以外の資産を売却した場合の総合課税の譲渡所得について、譲渡価額から取得費・譲渡費用・特別控除額を差し引く計算方法を示しています。また、所有期間5年超の場合は長期譲渡所得となり、総所得金額に算入する金額は原則として2分の1となります。
このFAQとの関係
少額減価償却資産の特例を適用した事業用固定資産が譲渡所得となる場合の、売却後の所得計算方法を確認する根拠となります。
通達・告示 法第33条《譲渡所得》関係 33-1の2(少額重要資産の範囲)
概要
10万円未満の減価償却資産や一括償却資産について例外となる「業務の性質上基本的に重要なもの」を、業務の遂行上直接必要で、かつ欠くことのできない減価償却資産としています。また、そのような資産でも、事業の性質上、使用後に反復継続して売却することが通常である場合には、事業所得になることを示しています。
このFAQとの関係
10万円未満の資産や一括償却資産を売却した場合の例外を説明する際に、「業務の性質上基本的に重要なもの」の意味を具体化する根拠となります。

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