結論
一定の要件を満たす個人事業主は、パソコンなどを買ったときに「少額減価償却資産の特例」を使って、購入金額の全額を経費にできます。
この特例を使って全額を経費にした事業用の資産をあとで売った場合、通常の事業用固定資産であれば、原則として「譲渡所得(総合課税)」として計算します。
事業で使っていた資産だからといって、売却したときの収入がすべて事業所得になるものではなく。
パソコンや機械、器具備品などの事業用資産を売った場合は、
原則として「譲渡所得」になると考えておくと分かりやすいです。
10万円未満の資産などは、売ったときの扱いが異なります
ただし、購入時の処理によっては例外があります。
特に、
- 10万円未満で、購入時に全額を経費にした資産
- 一括償却資産として処理した資産
は、売ったときの所得の扱いが異なります。
違いを表でまとめると、次のとおりです。
| 確認項目 |
通常の 減価償却資産 |
取得価額 10万円未満※1 |
一括償却資産※1・※2 |
少額減価償却資産の 特例を使った資産※3 |
|---|---|---|---|---|
| 具体例 |
通常の方法で減価償却している パソコン・スマホなど |
購入時に全額を経費にした 10万円未満のパソコン・スマホなど |
一括償却資産として処理した パソコン・スマホなど |
少額減価償却資産の特例を使って、 購入時に全額を経費にしたパソコン・スマホなど |
| 買ったときの処理 |
耐用年数に応じて 少しずつ経費にする |
原則として購入金額の 全額を経費にする |
購入金額を 3年間で均等に経費にする |
一定の要件のもと、購入金額の 全額を経費にする |
|
売ったときの 所得 |
原則として、譲渡所得として扱います。※4 |
原則として、 事業所得または雑所得として扱います。※1 |
原則として、 事業所得または雑所得として扱います。※1 |
原則として、譲渡所得として扱います。※4 |
※1 10万円未満の減価償却資産や一括償却資産でも、「業務の性質上、基本的に重要なもの」に当たる場合は、原則として譲渡所得になります。簡単にいうと、その仕事をするために直接必要で、仕事を続けるうえで欠かせない資産などが該当します。
※2 一括償却資産とは、取得価額10万円以上20万円未満の減価償却資産について、3年間で均等に経費にする方法を選んだ資産です。
※3 2026年4月1日以後に取得した資産については、一定の要件のもと、取得価額10万円以上40万円未満の資産が少額減価償却資産の特例の対象となります。
※4 資産を繰り返し売ることがその事業では通常である場合などは、事業所得として扱うことがあります。
このように同じパソコンやスマホでも、買ったときの金額や、どの方法で経費にしたかによって、売ったときの税金の扱いが変わります。
購入時に全額を経費にした金額は、売却時にもう一度差し引けません
譲渡所得を計算するときは、通常、売却代金からその資産を買ったときの金額などを「取得費」として差し引きます。
ただし、少額減価償却資産の特例を使って購入金額の全額をすでに経費にしている場合、その金額を売却時にもう一度「取得費」として差し引くことはできません。
そのため、全額を経費にしている場合は、基本的に取得費は0円となり、売却代金から売却に直接かかった費用などを差し引いて譲渡所得を計算します。
- 2026年4月1日以後にPCを30万円で購入
- 少額減価償却資産の特例を使い、30万円全額を経費にした
- 後日、12万円で売却した
この場合、購入したときの30万円はすでに経費にしているため、売却時にもう一度30万円を差し引くことはできません。
売却代金12万円 - 取得費0円 = 譲渡益12万円(特別控除前)
※売却手数料など、売るために直接かかった費用があれば、その金額は差し引きます。
なお、総合課税の譲渡所得には年間50万円の特別控除があります。
ほかに総合課税の譲渡所得がなければ、この例の12万円は50万円の特別控除の範囲内です。
また、資産を5年を超えて持っていた場合は「長期譲渡所得」となり、50万円を差し引いたあとの金額の2分の1を、ほかの所得と合計して税金を計算します。
特例を使える金額は、買った時期によって異なります
少額減価償却資産の特例で全額を経費にできる資産の金額は、取得した時期によって異なります。
2026年4月1日以後に取得した資産は40万円未満が基準です。
それより前は30万円未満でした。
実際に売却したときは、
- 資産の種類
- 購入日
- 売却日
- 購入時にどの方法で経費にしたか
固定資産台帳や青色申告決算書などで確認して処理するようにしましょう。